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- 蕁麻疹(じんましん)
蕁麻疹について
・蕁麻疹は多くの方が一度は経験する、身近な皮膚の病気です。かゆみを伴う赤みのある膨らみ(膨疹)が突然あらわれ、多くは数時間以内に跡形もなく消えていくのが特徴です。
・本ページでは、蕁麻疹の全体像、症状・診断、治療、外用薬・注射薬について、 主に日本皮膚科学会「蕁麻疹診療ガイドライン2026」を参考にしてまとめています。
・Q&A形式となっておりますので、患者様に必要なところ、気になるところをご覧頂けたら幸いです。
なお、本ページに記載している内容は疾患に関する一般的な情報であり、必ずしも全ての患者さまに当てはまるものではありません。症状の表れ方や適切な治療法には、個人差があります。実際の診断・治療にあたっては必ず医師の診察を受けて頂き、医師と患者さまとの十分な話し合い・合意のもとで治療方針を決定いたします。
医療法人潤皮ふ科 院長 原田 潤

蕁麻疹の原因
蕁麻疹の症状
蕁麻疹の治療
Q1. 蕁麻疹とはどのような病気ですか?
・蕁麻疹とは、「膨疹(ぼうしん)」と呼ばれる、紅斑を伴った一過性で境界のはっきりした皮膚の盛り上がりが、出たり消えたりを繰り返す病気です。
・ひとつひとつの膨疹は、通常30分から24時間以内に、跡を残さずに消えていくのが特徴で、多くの場合強いかゆみを伴います。
・まぶたや唇、手足などが大きく腫れる「血管性浮腫」を伴うこともあります。血管性浮腫は皮膚や粘膜のより深い部分の浮腫で、膨疹よりも消えるまでに2〜3日と時間がかかる傾向があります。
Q2. 蕁麻疹の原因は何ですか?
・蕁麻疹は大きく次の2つに分けられます。
①特発性蕁麻疹:はっきりした誘因なく、自発的に膨疹があらわれるタイプ(慢性蕁麻疹の多くはこちら)
②刺激誘発型蕁麻疹:食物や物理的な刺激など、特定の刺激が加わったときにだけ症状が出るタイプ(アレルギー性、非アレルギー性、物理性、コリン性、接触蕁麻疹など)
・頻度としては特発性のもの、すなわち原因不明のものが多いとされています。ですので、原因不明と言われても、過度に気にする必要はありません。
Q.3 食べ物が原因で蕁麻疹が出ることはありますか?
・食物が直接的な誘因となって蕁麻疹が出ることがあり、これは食物アレルギーによる「アレルギー性」の蕁麻疹に分類されます。特定の食品を食べた後、短時間で膨疹が出る場合はこのタイプが疑われます。
・ただし、毎日蕁麻疹が続くような慢性の蕁麻疹の場合、食物が原因であることは実は多くありません。自己判断で多くの食品を除去すると栄養面での負担になることもあるため、心当たりがある場合はまず医師にご相談ください。
Q4. ストレスや疲労は蕁麻疹に関係しますか?
・関係があります。過労やストレスは、蕁麻疹の発症や悪化に関わる背景因子のひとつとして知られています。
・直接の原因物質がなくても、体調不良や睡眠不足、精神的な緊張が続くタイミングで症状が出やすくなったり悪化したりすることがあります。
・特発性の慢性蕁麻疹の方では、規則正しい生活を心がけ、過労やストレスをためすぎないようにすることが、症状の安定にもつながります。
Q5. 感染症がきっかけで蕁麻疹が起こることはありますか?
・感染症をきっかけとして蕁麻疹が起こることはあります。蕁麻疹の背景因子として、さまざまな感染症が関わっている場合があることが知られています。
・具体的には、ヘリコバクター・ピロリ菌感染、アニサキス(寄生虫)感染、C型肝炎ウイルス感染、新型コロナウイルス感染症などが報告されています。
・症状がなかなか改善しない慢性蕁麻疹の場合、こうした背景疾患の有無を確認するために、血液検査などを行うことがあります。
Q6. 寒さや日光、衣服のこすれなど、物理的な刺激でも蕁麻疹は起こりますか?
・物理的な刺激でも、蕁麻疹は起こります。これは「物理性蕁麻疹」と呼ばれるタイプで、刺激誘発型蕁麻疹のひとつです。
・代表的なものに、皮膚をこすったり圧迫したりすると出る「機械性蕁麻疹(皮膚描記症)」、冷たいものに触れると出る「寒冷蕁麻疹」、日光に当たると出る「日光蕁麻疹」、汗をかいたり体温が上がったりすると出る「コリン性蕁麻疹」などがあります。
・どのような刺激で症状が出るかを詳しく調べるため、実際に温熱や冷却などの刺激を加えて反応を確認する「誘発試験」を行うことがありますが、これらの検査は院内では難しいため、地域の基幹病院を紹介させて頂くかたちとなります。
Q7. 薬が原因で蕁麻疹が出ることはありますか?
・薬が原因で蕁麻疹が出ることはあります。薬剤は蕁麻疹の直接的な誘因のひとつで、特に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs、いわゆる痛み止めや解熱剤の一部)は蕁麻疹を誘発・悪化させることが知られています。
・特定の薬を服用した後に蕁麻疹が出た経験がある場合は、受診時に必ずお薬の名前や服用のタイミングを医師にお伝えください。
Q8. 蕁麻疹にはどのような症状がありますか?
・典型的な症状は、赤みを伴った境界のはっきりした皮膚の盛り上がり(膨疹)が、体のあちこちに突然あらわれることです。強いかゆみを伴うことが多く、掻くとさらに範囲が広がることもあります(紅色皮膚描記症)。
・ 個々の膨疹は通常30分〜24時間以内に自然に消えますが、次々と新しい膨疹が出ては消えることを繰り返すため、結果として症状が何日も続いているように感じられます。まれに腹痛や発熱などの全身症状を伴うこともあります。
Q9. 血管性浮腫とは何ですか?蕁麻疹とは違うのでしょうか?
・血管性浮腫は、皮膚や粘膜のより深い部分に起こる限局的なむくみで、蕁麻疹と関連の深い症状です。まぶた、唇、頬、手足などに好発し、皮膚の表面が赤くならないこともあります。
・個々の膨疹が1日以内で消える蕁麻疹と異なり、血管性浮腫は消えるまでに2〜3日ほどかかることが多いのが特徴です。蕁麻疹と合併することも、血管性浮腫だけが単独で起こることもあります。
Q10. 急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹はどう違うのですか?
①急性蕁麻疹…症状が出てから6週間以内に治まるもの
②慢性蕁麻疹…ほぼ毎日のように膨疹が出没する状態が6週間を超えて続くもの
・急性蕁麻疹では感染症や食物などのきっかけが比較的わかりやすい場合がありますが、慢性蕁麻疹になると原因不明の特発性であることが多くなります。
・慢性蕁麻疹は治療により時間をかけて改善していく病気で、根気強い治療が必要になることがあります。
Q11. 蕁麻疹の検査について教えてください。
・当院では、蕁麻疹が頻発する方や広範囲に出現して痒みが強い方、長期間蕁麻疹が持続して原因が気になる方を対象に、下記の検査を施行しております。
・アレルギー検査…View39やドロップスクリーン検査(詳しくはアレルギー検査のページをご覧ください)
・背景疾患が疑われる場合…肝機能・腎機能・甲状腺機能、CRP(炎症の値)、抗核抗体など
・絶対に原因が特定できるとは限りませんが、背景疾患やアレルギーを除外することで不安はかなり和らぎます。蕁麻疹で長期間お悩みの方は、遠慮なくご相談ください。
アレルギー検査のページはこちら
Q12. 蕁麻疹の治療の基本は何ですか?
・治療の基本は、眠気などの副作用が少ない「非鎮静性の第2世代抗ヒスタミン薬」を内服することです。かゆみやアレルギー反応の原因となるヒスタミンのはたらきを抑えることで、症状を効果的にコントロールします。
・通常量で効果が不十分な場合は、量を増やしたり(倍量投与)、別の抗ヒスタミン薬に変更したりしながら、症状が落ち着く量・種類を見つけていきます。
Q13. 抗ヒスタミン薬を飲んでもなかなか治らない場合はどうするのですか?
・抗ヒスタミン薬だけで十分にコントロールできない慢性の蕁麻疹に対しては、段階を踏んで治療を強化していきます。
①第1段階:非鎮静性の第2世代抗ヒスタミン薬を通常量から2倍量まで調整
②第2段階:抗ヒスタミン薬に加えて、生物学的製剤(オマリズマブ®やデュピルマブ®)を併用
③第3段階:シクロスポリンなど、免疫を調整する薬剤による専門的な治療
・蕁麻疹の症状の程度に応じて、皮膚科専門医が治療方針を検討します。
Q14、蕁麻疹の治療におけるゾレアとデュピクセントの違いについて教えてください。
・ゾレア®とデュピクセント®は、いずれも蕁麻疹診療ガイドライン2026において、抗ヒスタミン薬だけでは十分にコントロールできない慢性蕁麻疹に対する「第2段階(生物学的製剤)」の治療選択肢として位置づけられている薬剤です。
①作用機序について
・ゾレアは、蕁麻疹の症状を引き起こすきっかけとなる「IgE」という体内の物質にくっついて、その働きを抑える注射薬です。IgEが皮膚の肥満細胞という細胞と結びつくのを防ぐことで、かゆみやじんましんの元になる反応が起こりにくくなります。
・デュピクセントは、アレルギーによる炎症を引き起こす「IL-4」「IL-13」という2つの物質の働きを、その受け口(受容体)の部分でまとめてブロックする注射薬です。炎症の指令そのものを抑えることで、症状を落ち着かせます。
・どちらも体全体の免疫を広く抑えてしまう薬ではなく、蕁麻疹の症状に関わる特定の経路だけをねらって効果を発揮する薬という点は共通しています。
②用法用量について
・ゾレアは、1回300mg(1本)を、4週間に1回のペースで皮下注射します。蕁麻疹の治療では、一定の量を決まった間隔で注射する方法がとられます。
・デュピクセントは、初回だけ少し多めの600mg(2本)を注射し、その後は300mg(1本)を2週間に1回のペースで注射します。
・どちらの薬も、ご自身やご家族が自宅で注射する「自己注射」に対応しており、最初は医療機関で医師や看護師から注射の仕方を教わり、慣れてきたら通院の負担を減らしながら治療を続けていただくことができます。
③値段について
・お薬の値段(薬価)は、ゾレア300mg(1回分)がおよそ3万9千円前後、デュピクセント300mg(1回分)がおよそ5万3千円前後です。
・ゾレアは4週間に1回の注射で、1月あたり自己負担3割の方で1万2千円+診察料となります。
・デュピクセントは2週間に1回の注射で初回のみ2本注射となるため、1月あたり自己負担3割の方で初月が4万8千円+診察料、2回目以降は3万2千円+診察料となります。
・なお、上記は3割負担の方の計算となるため、1割や2割、子供さんの方の場合はもう少し自己負担は少なくなります。
④治療における位置づけについて
・どちらの薬も、まず抗ヒスタミン薬による治療を行い、それでも症状が十分に落ち着かない場合に検討する「次の段階」の治療薬という位置づけです。
・中でもゾレア®は、これまでの使用実績やデータの蓄積が最も多く、抗ヒスタミン薬で効果が不十分な患者さんに対する治療のガイドラインでも、優先して検討される薬として位置づけられています。また、デュピクセント®と比較して、治療費が安い点も魅力です。
・一方、デュピクセント®は、比較的新しい治療薬でありながら、ゾレア®を使っても十分な効果が得られなかった患者さんにも症状の改善が確認されている点が特徴です。そのため、「ゾレア®を試したが効果が物足りなかった」という患者さんにとっての新たな選択肢としても注目されています。
・様々な側面からゾレアとデュピクセントを比較してきましたが、いかがでしたでしょうか。潤皮ふ科ではゾレアとデュピクセントの両方を扱っておりますので、注射をご希望の方は遠慮なくご相談ください。
Q15. 蕁麻疹の治療にステロイドの内服薬は使うのですか?
・ステロイドの内服薬は蕁麻疹治療の第一選択ではありません。症状が非常に重く、抗ヒスタミン薬だけでは十分にコントロールできない場合に限り、短期間だけ補助的に使用することがあります。長期間の使用は副作用の観点から基本的に避けられます。
Q16. 子どもの蕁麻疹治療で気をつけることはありますか?
・お子さまの場合、第1世代の抗ヒスタミン薬(市販薬などに含まれることがあるタイプ)は、脳への移行性が高く、眠気だけでなく学習や集中力といった認知機能への影響が懸念されるため、できるだけ避けることが推奨されています。
・お子さまの蕁麻疹治療では、こうした副作用の少ない非鎮静性の第2世代抗ヒスタミン薬を中心に、年齢や体重に応じた用量で治療を行います。当院ではザイザル®、アレロック®、ジルテック®などを中心に治療しています。
Q17. 治療はいつまで続ければよいですか?自己判断でやめてもよいですか?
・症状が消えてすぐに薬をやめてしまうと、再び蕁麻疹が出てしまうことが少なくありません。一般的には、症状が消失してからも2週間~1か月程度を目安に治療を継続し、その後、医師と相談しながら少しずつ薬の量を減らしていく方法がとられます。
・自己判断で急に中断せず、症状が落ち着いてきたら医師にご相談のうえ、減量のタイミングを決めていきましょう。
Q18. 日常生活で気をつけることはありますか?
・刺激誘発型の蕁麻疹(食物、物理的刺激、特定の薬剤など、原因がはっきりしているタイプ)の場合は、その原因となる刺激や物質をできるだけ避けることが、何より大切な対策になります。
・原因となる食品や薬剤が特定できている場合は、可能な限りその曝露を避ける
・食物アレルギーが原因の場合は、誤って摂取してしまったときに備えて、抗ヒスタミン薬を常に携帯しておく
・特発性の慢性蕁麻疹では、睡眠不足や過労、ストレスをためすぎないよう、規則正しい生活を心がける
・締め付けの強い衣類や、皮膚をこする・掻くといった物理的な刺激を避ける
Q19、蕁麻疹以外の重い病気を疑った方が良い症状はありますか?
・通常の蕁麻疹の症状に加えて、下記のような症状がある場合は、蕁麻疹以外の重い病気(アナフィラキシーなど)の可能性があります。
・クリニックレベルでは対応が難しいため、下記の症状がある場合は自宅で様子を見ずに速やかに基幹病院の救急外来を受診してください。
・息苦しさ、のどの詰まった感じ、声のかすれ
・唇や舌が急激に大きく腫れる
・めまい、意識が遠のく感じ、血圧の低下
・強い腹痛や嘔吐を伴う
Q20. クリニックからのメッセージ
・蕁麻疹は、皮膚科が最も得意とする皮膚疾患です。市販の飲み薬や塗り薬だけでは根本的な改善が難しいことも多いため、蕁麻疹が繰り返す場合や長引く場合は、せひ一度皮膚科専門医にご相談ください。原因の見極めや、お一人おひとりに合った内服薬・注射薬の選択・調整を行います。
・以前は抗ヒスタミン剤の内服が治療のメインでしたが、注射薬も一般的になり、クリニックレベルでも症状が強い方には用いることができるようになりましたので、頻度の高さや症状の重さで悩まれている方はぜひ一度ご相談ください。
参考文献:蕁麻疹診療ガイドライン策定委員会「蕁麻疹診療ガイドライン2026」日本皮膚科学会雑誌(公益社団法人日本皮膚科学会)
作成日:2026年8月 監修:医療法人潤皮ふ科 原田 潤



