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アトピー性皮膚炎とは
本ページでは、アトピー性皮膚炎の全体像、症状・診断、治療、外用薬・注射薬について、 主に日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」を参考にしてまとめています。Q&A形式となっておりますので、患者様に必要なところ、気になるところをご覧頂けたら幸いです。
なお、本ページに記載している内容は疾患に関する一般的な情報であり、必ずしも全ての患者さまに当てはまるものではありません。症状の表れ方や適切な治療法には、個人差があります。実際の診断・治療にあたっては必ず医師の診察を受けて頂き、医師と患者さまとの十分な話し合い・合意のもとで治療方針を決定いたします。
医療法人潤皮ふ科 院長 原田 潤
アトピー性皮膚炎の全体像
アトピー性皮膚炎の症状・診断
アトピー性皮膚炎の治療
Q1、アトピー性皮膚炎とは?
・アトピー性皮膚炎とは、かゆみを伴い、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら慢性的に経過する湿疹(皮膚炎)です。
・多くの患者さんは、気管支喘息やアレルギー性鼻炎・結膜炎といったアレルギー疾患の家族歴・既往歴や、アレルギー体質(アトピー素因)を持っています。
・アトピー性皮膚炎の根本には皮膚が生まれつき乾燥しやすくバリア機能が低下しているという特徴があり、そこに様々な刺激やアレルギー反応が加わって発症すると考えられています。
・慢性の病気ではありますが、適切な治療を続けることで、症状のない状態、あるいは症状があっても軽く日常生活に支障のない状態を維持することが期待できます。
Q2、小児アトピー性皮膚炎の治験について
・当院では、現在、小児アトピー性皮膚炎の治験にご参加いただける方を募集しています。詳細についてはこちらをご確認いただき、ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
Q3、アトピー性皮膚炎の症状・好発部位は?
・顔面や頚部、肘や膝・手首・足首の関節部、体幹などに左右対称に湿疹が生じやすいのが特徴です。
・年齢によっても症状の出やすい場所は変化し、乳児期は頭や顔から始まり体幹・手足に広がる傾向があり、幼児期以降は首まわりや肘・膝の内側などの関節部に、思春期から成人になると顔・首・胸・背中といった上半身に症状が強く出やすくなります。
・アトピー性皮膚炎の急性期には赤みやジュクジュクとした皮疹、慢性期には皮膚が厚く硬くなる苔癬化という状態がみられることもあります。
Q4、アトピー性皮膚炎はどう診断しますか?
・日本皮膚科学会の診断基準に基づき、かゆみがあること、年齢や部位に応じた特徴的な湿疹がみられること、症状を繰り返しながら長期間(乳児は2か月以上、それ以外は6か月以上)続いていること、の3点を総合的に確認して診断します。
・似た症状を示す接触皮膚炎や脂漏性皮膚炎、疥癬、乾癬などの病気との鑑別も重要であるため、自己判断はせず皮膚科での診断をお勧めします。
Q5、アトピー性皮膚炎の治療目標は?
・治療の目標は、症状が全くないか、あっても軽度で日常生活に支障がなく、薬もあまり必要としない状態を維持することです。
・皮膚バリア機能を低下させる遺伝子異常の修正は難しいのですが、ステロイド剤やその他の外用薬、内服薬、注射薬などを適切に使えば、良い状態に持ち込んで維持することは多くの方で可能となります。
・アトピー性皮膚炎の症状に困らず、快適に過ごせる状態を目指して、治療を行っていきます。
Q6、アトピー性皮膚炎の治療の基本的な考え方は?
・アトピー性皮膚炎は体質的な要因に加え、様々な悪化因子が重なって起こる皮膚病であるため、症状を抑える対症療法が治療の基本になります。
・具体的には、①悪化因子の検索と対策、②保湿剤によるスキンケア、③炎症を抑える外用薬による薬物療法の3本柱を組み合わせて行います。
Q7、アトピー性皮膚炎の悪化因子は?
・乳幼児では食物アレルゲン、それ以降の年齢ではダニやハウスダストなどの環境アレルゲンが関係することがありますが、検査の結果だけで判断せず、実際にそれらが症状の悪化につながっているかを確認する必要があります。
・また、汗や乾燥、肌に触れる衣類や物質による刺激、精神的なストレスなども悪化因子として見落とせません。ストレスが要因となり、無意識に皮膚をかいてしまう癖が症状の慢性化につながることもあるため、思い当たる方はぜひ診察の際にお話しください。
Q8、スキンケアはどうするのが良いですか?
・アトピー性皮膚炎の方は皮膚のバリア機能がもともと低下しているため、外用薬で炎症を治めても、保湿などのスキンケアを怠るとすぐに症状がぶり返してしまいます。
・入浴やシャワーで皮膚を清潔に保ち、刺激の少ない石けんで優しく洗ったうえで、保湿剤を1日1~2回程度塗ることが治療の大原則です。
・炎症を抑える治療とスキンケアは、どちらも欠かすことのできない両輪と考えてください。
Q9、日常生活の注意点は?
・汗をかいたらこまめに拭き取ったりシャワーで洗い流したりする、肌に合わない衣類や刺激の強い成分を避ける、爪を短く切って掻き壊しを防ぐなど、日常生活での工夫も症状の安定に役立ちます。
・症状の程度や生活環境は患者さんごとに異なりますので、気になる症状がある方、治療を続けても改善が乏しい方は、自己判断で市販薬や民間療法に頼る前に、一度当院にご相談ください。
Q10、ステロイド外用薬について教えてください。
・アトピー性皮膚炎の炎症を抑える外用薬にはステロイド外用薬のほか、プロトピック®軟膏・コレクチム®軟膏・モイゼルト®軟膏といった非ステロイド系の外用薬があります。
・ステロイド外用薬は、アトピー性皮膚炎の外用薬の基本となります。ステロイド外用薬は効果の強さによって5段階に分類されており、体の部位や皮疹の重症度に応じて、それに見合った強さの薬剤を選びます。
・重症であればより強いランクの薬剤を、軽症であれば弱いランクの薬剤やステロイドを含まない保湿剤などを使用します。
・アトピー性皮膚炎の炎症が強い急性期には非ステロイド外用薬では効果が不十分な場合が多いため、ステロイド外用薬でしっかり炎症反応を抑えた後に、外用回数を減らしていったり、非ステロイド外用薬に切り替えたりします。
・自己判断で中断したり、逆に必要以上に長期間漫然と使用したりせず、医師の指示通りに使用することが大切です。
Q11、ステロイド外用薬の副作用は?
・ステロイド外用薬は、長期間・不適切に使用すると、皮膚が薄くなる、赤みが出る、多毛になる、ニキビのような発疹ができる、細菌や真菌・ウイルスによる感染症を起こしやすくなるといった局所的な副作用が生じることがあります。
・ただし、これらは重症度に見合わない強すぎる薬剤を漫然と使い続けた場合に起こりやすいものであり、医師の指示通りに適切な強さ・量・期間で使用すれば、過度に心配する必要はありません。
・特に、アトピー性皮膚炎の急性期で炎症反応が強い場合は、一時的に強いランクのステロイドを用いてしっかり症状を抑えることで、速やかに痒みを抑えることが可能となります。自己判断で「怖いから」と中断してしまうと、かえって症状が悪化し治療が長引くことにつながるため、疑問や不安があれば自己判断せず医師にご相談ください。
Q12、非ステロイド外用薬(プロトピック®軟膏・コレクチム®軟膏・モイゼルト®軟膏)について教えてください。
・アトピー性皮膚炎の治療では、症状の強い時期にステロイド外用薬で炎症を抑えたのち、改善した皮膚の状態を維持するために、ステロイド以外の塗り薬が使われることがあります。
・当院では患者さんの年齢や症状、皮膚の状態に合わせて、プロトピック®軟膏、コレクチム®軟膏、モイゼルト®軟膏の中から適したお薬をご提案しています。それぞれの特徴を以下にご紹介します。
①プロトピック®軟膏(一般名:タクロリムス)
・免疫の働きに関わるカルシニューリンという物質をブロックすることで炎症を抑えます。2歳以上のお子さまから使用可能です。
・ステロイドのような皮膚が薄くなる副作用がほとんどなく、正常な皮膚からは吸収されにくいという特徴があります。
・一方で、使い始めの数日から1週間ほどは、塗った部分にヒリヒリ感やほてり、かゆみを感じる方が多く、これは皮膚の知覚神経が刺激されるために起こる一時的な反応です。
・使用を続けるうちに軽快することがほとんどですが、刺激が強く感じられる場合はご相談ください。
②コレクチム®軟膏(一般名:デルゴシチニブ)
・炎症を伝える体内の情報伝達経路をブロックすることで効果を発揮します。生後6か月以上のお子さまから使用可能です。
・プロトピック®軟膏に比べて塗布時の刺激感は少ないとされていますが、副作用として塗った部分の毛包炎(毛穴の炎症)やざ瘡(ニキビのような皮疹)が比較的多く報告されており、まれに単純ヘルペスなどの皮膚感染症がみられることもあります。
③モイゼルト®軟膏(一般名:ジファミラスト)
・PDE4(ホスホジエステラーゼ4)という酵素の働きを抑えることで炎症を抑制します。生後3か月以上のお子様から使用可能です。
・他の2剤と異なり1回に塗る量に制限がなく、刺激感も少ないため使いやすいとされています。ただ、他の2剤と比べて、効き目はやや弱い印象です。
・主な副作用として毛包炎やざ瘡、塗布部位の刺激感が報告されています。
・いずれのお薬も、ステロイドの塗り薬に特徴的な皮膚萎縮や毛細血管拡張といった副作用が少なく、慢性的に症状を繰り返すアトピー性皮膚炎の維持療法に適しています。
・どのお薬が適しているかは、年齢やこれまでの治療経過、皮膚の状態によって異なりますので、診察の際に医師とご相談のうえ、最適な治療方針を一緒に決めていきましょう
Q13、アトピー性皮膚炎におけるプロアクティブ療法とは?
・アトピー性皮膚炎で症状の再燃を繰り返す部位に対しては、外用薬でいったんしっかり炎症を抑えたあと、保湿剤によるスキンケアを続けながら、炎症を抑える外用薬を週に2~3回程度など定期的に塗り、良い状態を維持する「プロアクティブ療法」という治療法があります。
・症状が出てから薬を塗るのではなく、あらかじめ計画的に外用することで再燃を防ぐ治療法です。当院ではプロアクティブ療法の実践に努めています。
・症状の再燃を防ぐことで皮膚のバリア機能が徐々に改善し、同じ外部刺激を受けても皮膚が耐えられるようになり、長期的にアトピー性皮膚炎のコントロールが改善することが証明されています。
Q14、抗ヒスタミン剤について教えてください。
・アトピー性皮膚炎の治療の基本は、ステロイドやタクロリムスなどの塗り薬による炎症のコントロールと、保湿剤によるスキンケアです。抗ヒスタミン薬の飲み薬は、この基本治療を土台としたうえで、かゆみを和らげる目的で補助的に用いられるお薬です。
・アトピー性皮膚炎では、かゆみを感じて掻いてしまうことで皮膚のバリア機能がさらに低下し、炎症が悪化してますますかゆくなるという悪循環(itch-scratch cycle)が起こりやすいことが知られています。
・抗ヒスタミン薬は、かゆみの原因物質であるヒスタミンの働きを抑えることで、この悪循環を断ち切る助けとなります。特に、かゆみによって夜眠れない、眠りが浅くなるといったお悩みがある方には、睡眠の質を改善する効果が期待できます。
・一方で、抗ヒスタミン薬は皮膚の炎症そのものを抑える力は限定的であり、あくまで塗り薬による治療を補う位置づけのお薬です。そのため、かゆみが強いからといって抗ヒスタミン薬だけに頼るのではなく、まずは塗り薬とスキンケアで炎症をしっかりコントロールすることが治療の基本になります。
・現在使われている抗ヒスタミン薬の多くは、眠気などの副作用が比較的少ない第二世代(非鎮静性)と呼ばれるタイプで、眠気の強さや効果の持続時間などお薬ごとに特徴があります。体質や生活スタイル(車の運転をされる方など)、妊娠・授乳の有無によって選び方が異なりますので、当院では患者さん一人ひとりに合ったお薬をご提案しています。
Q15、アトピー性皮膚炎における紫外線療法とは?
・アトピー性皮膚炎の治療は、塗り薬とスキンケアが基本となりますが、それだけでは十分に改善しない難治性の湿疹や、繰り返し症状が現れる部位に対して、紫外線療法(光線療法)を組み合わせることがあります。
・紫外線療法は、特定の波長の紫外線を皮膚に照射することで、過剰になった皮膚の免疫反応を抑え、炎症やかゆみを軽減する治療法です。なお、保険適用の治療となります。
・現在主流となっているのは、皮膚への負担が少ない波長を選んで照射する「ナローバンドUVB」と「エキシマライト」です。当院ではエキシプレックス308®(ターゲット型エキシマライト)を導入しており、局所に強い光を照射できるので短時間で照射でき、かつ病変部位のみに高い治療効果が見込めます。
・治療は週1〜2回程度のペースで通院いただき、皮膚の状態を見ながら少しずつ照射量を調整していきます。効果を実感するまでには数回から数週間程度の継続が必要です。
・副作用としては、照射後に日焼けのような赤みやほてりが出ることがありますが、通常は数日で治まります。まれに水ぶくれなどの強い反応が出ることもあるため、照射量は皮膚の状態に合わせて慎重に調整します。
・長期的には、皮膚の色素沈着などが起こる場合がありますが、アトピー性皮膚炎の治療で用いられる範囲の照射量では、発がんリスクを明確に高めるという証拠は現時点で示されていません。

Q16、注射薬(デュピクセント®、イブグリース®)について教えてください。
①お薬の効くメカニズムについて
・アトピー性皮膚炎では、サイトカインと呼ばれる物質、特に「IL-4」と「IL-13」が皮膚内の炎症を引き起こし、皮膚のバリア機能の低下やかゆみを誘発します。
・デュピクセントは「IL-4」と「IL-13」の両方を、イブグリースは「IL-13」を抑えることにより、炎症、かゆみ、バリア機能障害といったアトピー性皮膚炎の主要な問題点を改善します。
・臨床試験では、どちらの薬剤もアトピー性皮膚炎に非常によく効くと評価されています。
②注射時の保険要件について
・デュピクセント、イブグリースのいずれも、6か月以上継続してステロイド外用薬や非ステロイド外用薬(プロトピック®軟膏・コレクチム®軟膏・モイゼルト®軟膏)を充分量使用しているが良くならない、中等症以上のアトピー性皮膚炎の方が対象となります。
・なお、注射時の保険要件を満たしているかどうかは、初診時に医師が判断させて頂きますので、お薬手帳か処方内容が詳細に分かる前医からの紹介状を頂けると非常に助かります。
・投与年齢としては、デュピクセントは生後6か月以上、イブグリースは12歳以上かつ体重40kg以上の方が対象となります。
③投与スケジュールについて
③-1、デュピクセント
・デュピクセントは300mgと200mgの注射があり、15歳未満では体重ごとに投与スケジュールが設定されます。また、15歳以上では体重にかかわらず同じ投与方法となります。
デュピクセント…15歳未満の場合
・5~15kgの方…初回200mg 1本、2回目以降200mg 1本を4週間ごと
・15~30kgの方…初回300mg 1本、2回目以降300mg 1本を4週間ごと
・30~60kgの方…初回200mg 2本、2回目以降200mg 1本を2週間ごと
・60kg以上の方…初回300mg 2本、2回目以降300mg 1本を2週間ごと
デュピクセント…15歳以上の場合
・体重にかかわらず、初回300mg 2本、2回目以降300mg 1本を2週間ごと
③-2、イブグリース
・イブグリースは、12歳以上かつ40kg以上の方で、全て同じ投与方法になります。なお、投与3回目以降で、その時の皮膚症状に応じて2週毎もしくは4週毎で投与間隔を選べるのが、デュピクセントとの大きな違いになります。
イブグリース…初回250mg 2本、2回目 250mg 2本、3回目以降 250mg 1本を2週毎もしくは4週毎
④薬価および自己負担額について
・1本当たりの薬価は、デュピクセント300mgが53,659円、200mgが39,549円となります。また、イブグリース250mgは50,782円となります。成人の方で3割負担として比較すると、デュピクセント300mgは16,097円、イブグリース250mgは15,234円となり、若干イブグリースが安くなります。
・また、月単位で比較した場合、イブグリースで3回目以降に2週毎の投与を継続した場合はデュピクセントと大きな違いは出ないのですが、3回目以降に4週毎の投与を継続した場合はデュピクセント月2本(32,194円/月)に対してイブグリース月1本(15,234円/月)となるため、継続期間が長くなるほどイブグリースの方が安くなります。
⑤効果および副作用について
・今までの所、デュピクセントとイブグリースの直接的な比較はありませんが、アトピー性皮膚炎に対してはどちらもよく効くとされています。
・一見、抑えるものが多いデュピクセントの方がよく効きそうに感じますが、アトピー性皮膚炎の皮膚では「IL-13」がメインで働いているとされており、イブグリースも非常に効果は高いです。
・デュピクセントの強みとしては、アトピー性皮膚炎以外に結節性痒疹、特発性の慢性蕁麻疹、気管支喘息、慢性閉そく性肺疾患、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎で保険適応が通っているため、アトピー性皮膚炎以外のアレルギー性疾患の合併がある場合はこちらを選択した方がよい可能性があります。また、保険要件の関係上、12歳未満の方、12~14歳かつ体重40kg未満の方は、デュピクセントのみとなります。
・イブグリースの強みとしては、デュピクセントがやや効きにくい顔面の湿疹に効きやすいとされる事、副作用の1つであるアレルギー性結膜炎が出にくい事が挙げられます。また、注射後に皮膚症状が落ち着いて4週毎の注射となった場合は、デュピクセントと比較して自己負担額がだいぶ抑えられます。さらに、デュピクセントより作用時間が長いため、治療効果がより長時間持続する可能性があります。
・様々な側面からデュピクセントとイブグリースを比較してきましたが、いかがでしたでしょうか。潤皮ふ科ではデュピクセントとイブグリースの両方を扱っておりますので、注射をご希望の方は遠慮なくご相談ください。アトピー性皮膚炎でお困りの方の受診を、心よりお待ちしております。



